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2024.03.03 / 加工商品
三谷製糖『和三盆』ノスタルジックに溶けていく味わいを
上質な甘さ、淡雪のような口溶けを求め、
盆の上で3度研ぐから「和三盆」。
年の瀬迫る頃、竹糖(ちくとう:さとうきびの品種)の収穫は始まります。
原料となる竹糖は、代々受け継がれてきた種を大切に守りながら、毎年、この土地で育てた竹糖だけを使っています。
その日に収穫された竹糖は、その日のうちに届けられる。
些細な時間も良い品質のためにと、その場で絞られ、その日のうちに煮詰められていきます。
この工程は、ぐつぐつと煮えたぎる大釜に職人が付きっきりで、丁寧に灰汁をすくいながら、煮詰めていきます。
そして、夜中を超えて続くこの作業に、年の瀬は、家族まともに食事すらした記憶がないと教えてくれました。
伝統を守り、受け継いでいくことの表面的な美しさの中に、何かを犠牲にしてまで守り抜く覚悟と努力があることを忘れてはならないと感じました。
そして、名の由来となった「研ぎの工程」。
砂糖でいうところの「精製工程」ですが、工業的にはフィルター活性炭ろ過、遠心分離機によってミネラルもすべて完全除去され、透明で真っ白な結晶となります。
一方、「研ぎ」とは職人の技。
職人が白下糖の塊を、僅かな水を加えながら結晶と結晶を擦り合わせ、雑味と糖蜜を浮かせていく技です。
研ぎ終わると麻袋に入れ、一日掛けて石の重しで雑味を抜いていきます。
これを3日繰り返すことで、上品でほのかな香りのある「和三盆」の味が決まります。
先代の職人から受け継いだ技術は、さらに上質さを追求するがゆえに、
今では5回の研ぎを繰り返し、今の三谷製糖さんの「和三盆糖」は出来上がっている。
知るほどに有り難さは増していきます。
竹糖の品種が受け継がれ、この土地で収穫された竹糖だけを使った伝統の研ぎ製法。
何百年もほぼ変わらない製法と、厳密な作業のため、惜しみない時間をかけて作られる三谷製糖の「和三盆」は、
かつてあった江戸の食文化を鮮明に映し出しています。
ぜひ、口に含みほのかな香りを感じながら、まるで過去へタイムスリップしたかのように、ノスタルジックに溶けていく味わいを楽しんで頂きたいと思います。